大阪地方裁判所 昭和46年(ワ)3709号 判決 1972年7月27日
原告
有限会社友行園芸場
ほか一名
被告
第一陸送有限会社
主文
被告は、原告有限会社友行園芸場に対し、金一七七、〇〇〇円およびうち金一六七、〇〇〇円に対する昭和四六年八月二二日から原告三木正に対し金七、九三三円及びこれに対する右同日から各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
原告らのその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを七分し、その五を原告らの負担とし、その二を被告の負担とする。
この判決は原告ら勝訴部分に限り仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
(原告)
一 被告は、原告有限会社友行園芸場に対し、金六〇五〇二〇円およびうち金四七八、一五〇円に対する昭和四六年八月二二日からうち金七六、八七〇円に対する本訴状送達の翌日から原告三木正に対し金三四、六二〇円及びこれに対する本訴状送達の翌日から各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決および仮執行の宣言。
(被告)
一 原告らの請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
との判決。
第二請求の原因
一 事故
原告らは、次の交通事故により傷害および物損を受けた。
(一) 日時 昭和四六年四月一七日午後一時二〇分ごろ
(二) 場所 尼崎市常吉坂草五の六地先道路上
(三) 加害車 普通貨物自動車(神戸二り〇二九二号)
右運転者 訴外大石熊大男(南進)
(四) 被害車 小型乗用自動車(神戸五り八二一四号)
右運転者 原告三木正
(五) 態様 先行する右折車の通過まちのため停車したところ後方から進行して来た加害車が追突した。
(六) 傷害 原告三木頸部挫傷、全治一週間
物損 原告会社 車両破損
二 責任原因
(一) 運行供用者責任
被告は、加害車を所有し、自己のため運転の用に供していた。
(二) 使用者責任
被告は、自己の営業のため訴外大石を雇用し、同人が被告の業務の執行として加害車を運転中本件事故を発生させた。
訴外人の過失、前方不注視、ブレーキ操作不適当
三 損害
(原告三木正)
(一) 休業損害 一四、六二〇円
職業 原告会社従業員
収入 月七四、〇〇〇円(但し所得税八九〇円を含む)
休業期間 六日間
(74,000円-890円)×6÷30=14,620円
(二) 慰藉料 二〇、〇〇〇円
(原告会社)
(三) 車両損害 四一九、二五〇円
昭和四五年七月八日被害車を三二〇、二五〇円で購入し、九九、〇〇〇円の修理を施して以来原告会社の業務に使用していた。
(四) 代替車賃借料
事故日から昭和四六年七月一五日まで訴外東本岡太郎から軽四輪キヤブオート一台を一日七〇〇円で三七日間賃借し、原告会社人夫に対し、タクシー代として同期間一日三〇〇円を延べ一一〇人に支給することを余儀なくされた。
更に、昭和四六年七月一六日から同年一一月三〇日までの間代替車を賃借し三二、五〇〇円を支払つた。
一日につき七〇〇円 三六台 二五、二〇〇円
〃 五〇〇円 一三台 六、五〇〇円
一回につき二五〇円 四台 一、〇〇〇円
前同様人夫に対し一人一日三〇〇円を延べ一四七・九人に支払つた。
計 四四、三七〇円
四 よつて、被告に対し、原告会社は六〇五、〇二〇円及びうち四七八、一五〇円に対する昭和四六年八月二二日からうち七六八七〇円に対する請求の趣旨拡張の申立書送達の翌日から、
原告三木は三四、六二〇円及びこれに対する本訴状送達の翌日から、各支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
第三被告の答弁と主張
一 請求原因一、(一)乃至(五)は認める。(六)も認める。但し傷害、物損の内容は争う。同二、(一)乃至(三)は認める。
同三は争う。
本件事故による原告会社の損害は事故当時の被害車の正当な査定額である一六〇、〇〇〇円をもつて相当とすると云うべきである。
事故直後、被告は、原告会社に対し修理弁償を申出たが、代替車の弁償を強く要望されたため被害車と同型の中古車(三五〇、〇〇〇円)を発見し、右自動車をもつて、昭和四六年五月一〇日頃原告会社を訪れ弁償しようとしたが、原告会社は外にプラスアルフアの金員を要求したため示談成立するに至らず、被告は右車を持ち帰つたもので、右時点において、原告会社の受領、遅滞が発生したと云うべく、その後の休車損害については被告において、責を負ういわれはない。又人夫のタクシー代についてはその根拠すら存しないと云わざるを得ない。
第四証拠〔略〕
理由
一 請求原因一、(一)乃至(六)は傷害物損の内容を除き当事者間に争いなく同二(一)乃至(三)も争いない。
二 原告三木の傷害の部位程度
頸部挫傷
昭和四六年四月一七日青木診療所に一日通院
三 損害
(原告三木)
(一) 休業損害 四、九三三円
職業 原告会社従業員
収入 月給 七四、〇〇〇円
休業期間 二日
74,000円÷30×2=4,933円
(〔証拠略〕)
(二) 慰藉料 三、〇〇〇円
事故の態様、傷害の部位程度、治療の経過その他諸般の事情を総合して慰藉料は右金額をもつて相当と認める。
(原告会社)
(三) 車両損害 一六〇、〇〇〇円
(〔証拠略〕)
(四) 代替車賃借料その他
〔証拠略〕によれば被告会社代表者は事故当日原告会社に赴き、被害車の修理弁償を申出たところ、月末(昭和四六年四月末日)まで待つから同型車を探して来てくれと断られたため、尼崎で同型車が三五万円で売られていることを知り昭和四六年五月一〇日頃これを借り受けて原告会社を訪れたところ、相談して返事するとの事であつたので車の所有者に他に売却しない様に頼んでおいたところ二、三日して原告会社から車はあれでよいが更に五万円乃至一〇万円を出してくれとの返事であつたため結局示談成立に至らなかつた事実右示談交渉においては原告三木に対する損害賠償については被告会社からの申出もなかつたが原告らからも特に要求はしなかつた事実が認められる。
ところで本件事故日から被告が代替車を提供した昭和四六年五月一〇日までの二四日間の原告会社の代替料賃借料人夫タクシー代はその主張のとおりとしても
700円×24(日)=16,800円
300円×29(人)=8,700円
合計二五、五〇〇円となり代替車の外に五万円乃至一〇万円の上積みの要求は過大であると云うべきである。
なお〔証拠略〕によれば、原告会社は被告に対し当初損害賠償として一〇〇万円を要求した事実が認められる。
結局衡平の原則に照し原告会社は被告に対し事故発生の日である昭和四六年四月一七日から代替車の提供がなされた同月一〇日までの被害車両不使用による損害のみを請求できると解するのが相当である。
代替車賃借料 七、〇〇〇円(〔証拠略〕)
人夫タクシー代
証拠がない。
(五) 弁護士費用 一〇、〇〇〇円
右金額をもつて本件事故と相当因果関係ある損害と認める。
四 結局被告は、原告三木に対し七、九三三円及びこれに対する本訴状送達の翌日である昭和四六年八月二二日から、原告会社に対し一七七、〇〇〇円及びうち一六七、〇〇〇円に対する前同日から各支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
よつて、原告らの請求は右の限度で理由があるものと認めてこれを認容し、その余は棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 菅納一郎)